news

Client Alert- 役員の損害賠償責任限定:2022年8月1日施行オフィサー責任限定の定款規定を認めるデラウェア一般会社法改正を好機として

Oct 14, 2022
  • FisherBroyles News

A copy of this Client Alert can be found HERE .

 

Client Alert – 役員の損害賠償責任限定:202281日施行オフィサー責任限定の定款規定を認めるデラウェア一般会社法改正を好機として[i]

 

2022年8月1日に改正デラウェア一般会社法が施行され、その目玉として取締役に加え新たにオフィサー [ii]の責任限定規定を定款に設けることが認められることになった。役員責任限定の定款規定の必要性は、日系企業の米国子会社においては強く意識されてこなかったのではないかと思われる。取締役・オフィサーの責任限定規定は、正当性を欠く後知恵による責任追求を減らすための制度である。取締役に関しては、責任限定の規定を既に定款中に有しているという会社もあろう。しかし、取締役が社長、CEOなどを兼任している場合、これらのオフィサーとしての職務執行についての責任限定は認められていなかったのである。これらの役員を米国外にいる親会社の役員等が兼務している場合もある。今回の改正は、取締役及びオフィサーの両方をカバーする責任限定規定を設ける定款改訂を検討する良い機会を提供するものである。

 

一般の米国会社と同じく、日系の米国会社の多くがデラウェア州において設立されていると思われる。そして、他州と同様、デラウェア州においても取締役及びオフィサーは、会社のみならず株主に対しても注意義務及び忠実義務等の信認義務を負う。そのため、取締役及びオフィサーは会社及び株主から直接訴えられるリスクを負っている。

 

デラウェア州一般会社法において、取締役の責任限定規定は1986年から存在してきた。この取締役の責任限定規定によれば、定款にその旨の規定を設けることにより、単純な注意義務違反と見られるような場合は、会社及び株主に対して金銭的賠償責任を負わないとすることが認められている。一定の例外とは以下の場合をいう。

 

(1) 忠実義務の違反

(2) 真摯に行われたものでない作為若しくは不作為又は意図的不正行為若しくは悪意でおこなう法律違反

(3) 自己株取得規制及び配当規制等の意図的又は過失による違反

(4) 個人的に不当な利益を得た取引に関するもの

 

今回の改正において、オフィサーについても責任限定の定款規定を設けることができるようになったが、彼らについては取締役に関する以上の除外項目に加え、当該会社による又は当該会社名義で行われる訴訟も、責任限定のできない除外項目とされている。従って、オフィサーに関しては、今回の法改正による責任限定規定の追加後も、上記4つの除外項目該当かにかかわらず株主代表訴訟の対象になりうることになる。

 

繰り返しになるが、このような責任限定規定を定款で規定することを認めるのは、正当性を欠く後知恵による責任追求を減らすためである。この点、一般に上場会社の場合には、株主によるクラスアクションや株主代表訴訟によるリスクがはっきりしており必要性が強く認識されている。

 

それに較べると、非上場会社の場合には、一般にこのようなリスクは低下する。しかし、親会社が上場会社であったりすれば、親会社の株主が親会社に対し子会社にその役員の注意義務違反の追求することをせまったり、自ら株主代表訴訟を提起する圧力をかけたりする可能性がある。訴訟社会である米国では、上記のような状況がなくても、会社が、その取締役やオフィサーを訴えるというリスクは、常に存在する。会社形式でジョイントベンチャーをおこなっている場合など、株主が複数存在する会社もある。現地採用の役員にとっては、派遣社員に比べ日本の親会社との信頼関係が揺るぐような場合が発生しやすく、漠然と不安を抱えることもありうる。

 

会社によっては、取締役、オフィサーがそのような役職に関して第三者から訴えられたり訴訟の提起の意図を伝えられたりしたなどした場合には、一定の条件の下でその解決に要した費用を支払う定款、附属定款の規定があるだろう。取締役やオフィサーと個別の契約を結んでいる場合もあろう。会社自体から訴えられ又はその脅しにあった一定の場合には、その防衛及び和解に関して合理的に負担する費用の補填を義務づける手当てがなされることもある。仮にこのような手当がなされていても、定款による責任限定規定の適用があれば、訴えの提起自体を避けうる場合が多くなるであろう。従って、定款による責任限定規定が有効となりうる。

 

もちろん、取締役&オフィサー(D&O)損害賠償責任保険によってカバーされている場合もあろう。しかし、日本の親会社が加入する大手の保険会社の標準契約では、対象会社を日本の会社法上の子会社、つまり日本法人に限っている場合もあり、注意が必要である。また、保険には、支払い限度額がある。自己負担となる免責金額、縮小支払割合の適用もありうる。いずれにしても、最終的に金銭的損害を免れる場合であっても、訴える場合のハードルを高くし、まず損害賠償請求訴訟の動機を削いでおくことが賢明である。そうでないと、かえって保険契約が、訴訟の動機付けになってしまう場合もある。従って、今回の改正を機に、取締役及びオフィサーの双方について、責任限定の規定を設けておくことが検討されてよい。

 

今回追加されたオフィサーの免責規定については、二つ注意点がある。一つ目は、「オフィサー」の範囲である。誰が取締役であるかについて通常疑義は生じない。他方、どのようなオフィサーを設けるかは会社によってことなる。責任免除規定に限ると、一定の肩書きを有する者 [iii]は、自動的に免責の対象とすることができるオフィサーとされている。しかし、これらの者に限定されない。しかし、この場合、実際に訴状送達に関する書面を会社と交わすことが求められている。

 

二つ目は、既に触れたように、取締役の場合とことなり、会社自体の有する損害賠償請求権は、責任限定の除外事項とされているため、このような会社の権利に関する株主代表訴訟も、責任限定の対象にできないことになっている点である。これは、取締役に比し不利に見える。しかし、取締役に対するものと同様に、株主代表訴訟の提起には、まず、株主は、会社に会社としての訴訟を提起することを迫る努力をしたか、又はそのような努力が無駄であることを裁判所に対して示す必要がある。そして、訴訟を提起するかどうかは、取締役会の自主性が相当尊重されるので、取締役会が訴訟をしないという判断をした、或いはそのような判断をするだろうということだけでは、このような要件を満たさないとされる。つまり、取締役会という緩衝材がはいることになっている。そのため、株主による濫訴の弊害は避けうるのである。また、株主代表訴訟を起こすには、当該株主は、問題となった取引の時から継続して株主でなければならないため、一定の歯止めとなる。

 

以上のような理由から、今回の改正を契機として、取締役及びオフィサーの責任限定規定を定款で設けることにするか、既に、取締役の責任限定規定が定款で規定している場合には、これをオフィサーへ拡大することの検討がなされてよいと考えられる。他州のほとんどの会社法においても、既に定款において一定の責任限定規定を設けてよいことになっている。従って、この場合も、同様の検討がなされてしかるべきであろう。

 

このアラートに関してご質問のある方は、

渡邊健樹([email protected])、

ジェームズ・ローゼンブルース(james.ros[email protected])

又はアーパリー・コラデン([email protected]) まで、ご連絡ください。

 


[i] 本書は、米国法を日本語で解説をするという性格上、正確性には限界があることをお断りします。

[ii]  Officer。

[iii] 具体的には、president, chief executive officer, chief operating officer, chief financial officer, chief legal officer, controller, treasurer or chief accounting officerという肩書である。これらの者は、取締役とともに、訴状送達の代理人を当該会社の登録代理人に選任したものとみなされている。

About FisherBroyles, LLP

Founded in 2002, FisherBroyles, LLP is the first and world’s largest distributed law firm partnership. The Next Generation Law Firm® has grown to hundreds of partners practicing in 24 markets globally. The FisherBroyles’ efficient and cost-effective Law Firm 2.0® model leverages talent and technology instead of unnecessary overhead that does not add value to our clients, all without sacrificing BigLaw quality. Visit our website at www.fisherbroyles.com to learn more about our firm’s unique approach and how we can best meet your legal needs.

These materials have been prepared for informational purposes only, are not legal advice, and under rules applicable to the professional conduct of attorneys in various jurisdictions may be considered advertising materials. This information is not intended to create an attorney-client or similar relationship. Whether you need legal services and which lawyer you select are important decisions that should not be based on these materials alone.

© 2022 FisherBroyles, LLP